* 身体拘束ゼロ

 わたしたちは、老人病院の制度の変化とは少し離れたところで高齢者のための、あるべき医療・ケアの模索をしてきました。それは、縛らない医療、ケアの実践ということでした。

 外に向かって抑制廃止を、縛らないという表現で表明し、病院内のヒモというヒモを、ある時期は包帯まで捨ててしまったのです。そして、縛らない医療を実践していくなかで、わたしたちは多くのことを学ぶことができました。

 抑制を廃止しなければならない一番の理由は、抑制のもつ副作用・弊害です。
わたしたちは図のような抑制死という考え方を提示していますが、この抑制死が医原的な悪影響の最たるものだと思います。
患者さんが長期にわたって縛り続けられていると、食欲が低下し関節が拘縮し、筋肉が萎縮し、心・肺機能が低下し、全身が衰弱し、感染も起こしやすくなります。

 そして、縛られてしまったという、精神的なダメージとの相乗効果で、障害を持つ弱い高齢者に致命的な変化が生じてしまいます。
すると、たとえ縛ることを止めても、縛られる以前の状態には戻らないのです。
こういう抑制のたどる悪循環を説明したのが、抑制死という考え方なのです。

抑制死

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